Can you hear you? ~体の声が聞こえていますか?~ PART2 新谷奈津美さん

「等身大」の確認がカギ ~気持ちと体のすれ違いを乗り越えて~

イップスというとアスリートなどに限定されるが、ビジネス社会や学校生活でもさまざまなプレッシャーで心身に障害が出る例は少なくない。もちろん原因や症状はまるで別の話なのだが、自分ではどうしようもない、けれど自分でしか回復しえない状況からどのようにして抜け出せたのか。新谷さんの場合からひとつの解決法を探りたい。

 

絶頂期でイップスにはまった彼女は、自分流をことさら発揮し、不調な自分を立て直すべく、トレーニングで極限まで自身を追い込んだ。「とにかく滑り込み、技術を高めること」が唯一の突破口だった。しかし数多の試練をクリアしてきたそのスタイルも、イップスの前ではまるで無力だった。そんな姿を見かねて周囲がくれるアドバイスはすべてネガティブに映った。人間不信にも陥った。ついにはじん帯も損傷。イップスだけではない、とてつもない<負のスパイラル>が彼女を襲った。

 

一方で、転機も訪れた。じん帯の手術後リハビリ治療に励む中、理学療法士・アスレティックトレーナー・鍼灸師など医学的根拠に基づいた的確なアドバイスのもと、リハビリやトレーニング、練習を繰り返すと、体は順調に回復していった。そこで「トレーナーの知識がそのまま自分にあれば、もっと強くなれるのではないか」と思い、アスレティックトレーナーのへの道を志すことに。

 

また、その休養中に結婚し、出産をした。「自分だけ」ではない世界が一気に広がった。夫がいてこそ、娘がいてこそ自分がある、という思いが生まれた。妻として、ママとして、そして学生として…アスリート以外の自分でいる時間が増えると自然と気持ちにもゆとりが生まれた。

 

そうしたなか、28歳で現役復帰を果たす。完全にイップスを抜け出せたわけではなかったが、ふと「自分はなぜモーグルを続けているのか」と考えたとき、金メダルがほしくて続けていたことを思い出した。しかし以前の自分は技術面を高めることだけに注力した。技術的に満足できれば、自分の滑りができていれば、それでよかった。ゴールのない延々続く道を、自分の力をただ信じて突き進んでいただけだった。

そこで、もう一度原点に戻り、自分の中の<金メダル>を探すことにした。期限は2年、2015年3月を引退の日=ゴールと決めた。その2年間で現役生活に「やり残し」や「思い残し」のないよう全力を尽くす。

 

それは決して簡単ではなかった。長いインターバルは大きく影響する。母親でなお競技を続ける自分に周囲の目は甘くない。競技でスタートに立ったときには震えないよう気丈に振る舞ったが、実際には怖くて緊張した。実際初戦は完走した人の中で最下位だった。けれど、それが嘘のない今の自分。その後の2カ月間は<等身大の自分>は今どのような状態なのかをあらゆる視点から見つめ、受け入れ、気づくことをひたすら繰り返した。
また、並行して行っていたトレーナー活動が彼女をさらに進歩させる。学生たちに戦略や各自のポジション、動きなどを指導しながら結果が生み出されていく経緯を見つめながら、自身の<戦略>について考えた。アスレティックトレーナーの資格試験も、この先の引退シーズンもすべては<戦略>なのだという確信。「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」、果たして彼女はその後見事に三度の表彰台と全日本選手権でのファイナル進出を勝ち取った。そして2015年3月、とびきりの笑顔で引退した。

 

そんな彼女が引退後も毎日必ず続けている習慣。それは毎朝5分ほど、じっと自分を見つめること。メイクをする女性なら毎朝イヤでも鏡の中の寝ぼけ顔を直視するものだが、そうした見た目だけではなく、自分に集中してじっくり<今の自分>を見つめる機会。もちろん、最初は全身鏡などで自身の全身をチェックすることから始めても。

「毎日見たところで変化がないように思われるかもしれませんが、実は日々かなり違いますよ」とのこと。体というものは正確に<自分>を映し出すものらしい。何か悩みがあると自然にうつむいたり、猫背になっていたり…そうしたときでも、ちょっと胸を張ってみると気持ちもすっきりする。弱点や問題点は気づいてこそ、補える。足りない部分を満たせる。

毎朝の<リセット>習慣、ぜひ見習いたい。

 

まとめ

今後の活動イメージは、自身のアスリートとしてのすべての経験とアスレティックトレーナー資格を生かし、アスリートの育成をはじめ、いろんな人をそれぞれの<ゴール>に導けるようサポートすること。そしてゴールという<目的地>を目指すにはまず、いまの自分=現在地を知ることが肝要。彼女が立ち上げた.P(ドットプラン)という会社は、<名戦略家>である彼女がその道のりを支援してくれる。そして2017年には自らのトレーニング施設をオープンさせるのが目標であり、それがまた新たなスタートでもあるという。

くしくもまた2年後。その日までの道のりをまるでモーグルのように、多くの<コブ>を華麗に越えながら颯爽と滑走していく姿が見えるようである。

 

 ■プロフィール■ 

新谷奈津美(しんたになつみ):2000~15年、フリースタイルモーグル選手として活動。ママアスリートとして2年間活動後、15年に現役を引退。現在は公益財団法人日本体育協会認定アスレティックトレーナーの資格を生かして起業した.P(ドットプラン)代表として活躍中。

モーグル選手としては09年の新潟国体で団体の部優勝、個人2位。15年全日本フリースタイルスキー選手権大会ではファイナルに進出し、11位という記録を残す。


パワーフード&ドリンクWASA-Vシリーズ
アサイー入りパワードリンクWASA-Vアサイー&プロテイン
わさび配合パワーフードWASA-Vタブレット

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

PAGE TOP